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i Bee_田子町

田子町を“IT“と“化学“の力で変える 〜新規事業者「i Bee」の取り組み〜

2021.07.15

こんにちは。サンノワ田子町PR大使の五十嵐です。

2021年6月22日、田子町に新たな事業者が設立されました。

事業者名は、「i Bee」

i Bee_田子町

 

(i Beeのロゴマーク)

岩や石垣、他の樹木などにしっかりとつかまって生長し、枯れることなく伸びていく様子から『人と人の絆が途切れないように』と願いを込めた花言葉をもっているアイビー(ヘデラ)という植物と、群れを成す「ハチ」のように周りの人たちを巻き込みながら地域を盛り上げていきたいという想いから生まれたのがこちらの事業者名。

田子町出身の葛川智寛さんが代表を務め、花木章嗣さんが副代表に今後就任予定となっています。

若い人が離れ、人口減少が進む田子町。

彼らも一度は田子町から離れました。しかし、今敢えて田子町に戻り、新たな事業をスタートさせた二人。

今回は、そんな彼らのストーリーをご紹介します。

 

◇自己紹介をお願いします。

i Bee代表の葛川智寛です。1990年に田子町で生まれました。田子高校卒業後は、八戸や三戸など青森県内の会社で働き、2021年6月に個人事業「i Bee」をスタートさせました。

副代表に就任予定の花木章嗣です。1991年に田子町で生まれ、青森県内の大学院卒業後に山梨県の化学薬品メーカーに就職しました。2021年7月末で現職を退職予定で、今後はi Beeの事業の中でITを駆使したシステム/サイト構築・プログラミングを行っていく予定です。

i Bee_田子町

(右が葛川代表、左が花木さん)

◇i Beeではどんな事業を行っていますか?

葛川代表:生産者や地域事業者を対象とした、4つの事業をベースにしています。

1つ目は、ホームページやECサイトの構築。
2つ目は、SNSの管理・運営。
3つ目は、販路開拓・仲介事業。
4つ目は、商品などのブランディング及び、ラベル制作、印刷業です。

i Bee_田子町

(デスクワークがメインとのことですが、生産者の農作業をお手伝いすることもあるそうです。)

 

◇i Beeを設立した経緯を教えてください。

葛川代表:私たちが生まれた田子町には、魅力ある場所、商品、自然、産業、文化、多くのものがあると感じています。
かつて、星空日本一に輝いたこともあったり、みろくの滝が「スヌーピーの滝」として一部のSNSで話題になったりと地域資源はたくさんある。
一方で魅力のあるものが、十分に外に発信できていないのも課題だと感じていました。そういったところをi Beeが担って、田子町の魅力を最大限に外へ伝えられる仕組みをつくることができれば、今以上に田子町の産業が強くなると思っています。
また、情報発信するにもITを使ったシステム構築が必要なので、そういった技術を持っている花木と共に起業に至っています。

i Bee_田子町

(プログラミングをしている花木さん)

◇葛川さんと花木さんの出会い、お二人で起業に至った経緯を教えてください?

葛川代表:私たちは実家が近くで、小さい頃からお互いの家を行き来するような仲でした。
学年は1つ違いますが、小学校、中学校、高校も一緒で、部活も卓球部で一緒でした。
そんな私たちが去年東京で会う機会があって、さまざまな話をしていた際、ふと、私たちの地元である田子町の話になったんです。
当時、私は田子町のお隣三戸町の会社で働いていたのですが、自分たちの地元からどんどん若い人がいなくなり、人口が減っていることに危機感を持っていました。高校生ぐらいの時には7,000人ぐらいいた人口がこの10年ちょっとで5,000人以下にまでなっています。
魅力ある地元がこのままではもったいないと思い、起業を考えていることを花木に伝えたのが始まりでした。

花木さん:私はその時、東京の八王子に住みながら山梨県の化学薬品メーカーに勤めていました。
意外に思われるかもしれませんが、化学薬品メーカーは、それほどITを使って研究を行いません。
様々な薬品を開発するにも、人の知恵や経験から実験を重ね開発されていきます。
私は当時からITには興味があり、こういった実験や研究にITやAIの力を絡ませて事業を行ったらどうなるのだろうか、そういった想いを持っていました。
ただ、ITに興味はありましたが、その時の自分自身に技術がなく、またこういった新しいアイディアを会社に受け入れてもらえるかわからなかったので、行動には至りませんでした。
ただ、自分としてもITの勉強をもっとして「化学」と組み合わせることで、何か新しいことをスタートできないか。その想いは持ち続けていました。
そんな時に葛川の話を聞いたんです。話を聞いた瞬間にこれだと思い、すぐにOKを出しました。

葛川代表:実は、私は花木がこういった話に興味があるとは思っていなかったんです(笑)
大きな企業に勤めていたし、東京に住んでいたし。田子町に戻ってきて給与も保証されないスタートアップの自分の事業を一緒にやってもらえるとは思っていなかったんです。
でも、起業するなら彼とやりたいという想いはあって、小さいころから知っているのもあって、誰よりも信頼できていた。
それこそお金を積んで、もっとITに詳しい人にやってもらうこともできたと思うんですが、やっぱりお金ではない。彼への信頼感があってこそだと思ったので二人でやっていくことを決めました。

 

◇花木さんは東京に住んで大きな企業に勤められていたんですね。
安定した道を捨て、新たな道を地方でチャレンジ。周囲から反対の声はなかったですか?

花木さん:ありがたいことに友人や前職の職場の方々、みんな応援してくれています。
田子町に住んでいる家族にも会社を辞め、田子町に帰ることを伝えたとき、応援してくれていました。
ただ、今実家に帰ってきて収入もなく家にいると「本当に稼げるの?」なんて家族から言われることもあります(笑)。まあ、でもこれからですからね。

 

 

◇i Beeのホームページを見ていると先ほど話された4つの事業のベースになる部分として、「地域づくり」というコンセプトも書かれています。
そういったコンセプトを持つに至ったのには、どんな経緯があったのでしょうか?

葛川代表:今から3年前になりますが、実は、その当時も起業を考えていました。
どんどん進化するITの技術がその当時から地方には入り込んでいなくて、自分が知っている技術やITをもっと地方の人、特に年配の方達に伝えられるようなビジネスを考えていました。
今掲げている「地域づくり」のコンセプトとは少し違ったものだったかもしれません。
起業のための資金を集めるためクラウドファンディングに挑戦したりと準備を進めていた中で、今でも大変お世話になっている三戸町の地域商社SANNOWAの吉田社長にお会いしました。
そこで吉田社長がこれから立ち上げられるSANNOWAという会社の運営を手伝って欲しいとお声かけいただき、自分の起業は一旦そこでストップさせ、SANNOWAに入社することにしました。
SANNOWAに入ってからは、会社の立ち上げ方や運営だけではなく地域商社がどう地域づくりに役立っていくのか、様々なことを学びました。生産者さんとの繋がりもできました。
これまでの「作った作物を市場に出荷する」という流れだけでは、生産者は消費者の顔を見ることができませんが、地域商社を介して生産者と消費者がダイレクトに繋がることで、自分たちの作った作物がどんなふうに喜ばれているのか、そういったことも生産者に還元することができていました。
「地域商社」としての役目に大きなやりがいを感じている中で、そんな経験や知識を今度は自分の地元である田子町で、同じようにやるのではなく自分がこれまで思ってきたITでの地域づくりと、さらに「化学」という目線も加え田子町の地域づくりを行いたいと思い今に至っています。

三戸町ホップ収穫

(葛川代表の前職時代。生産者、同僚や地域の方々とホップの収穫を行った際の写真。左下が葛川代表)

 

◇地域づくりに「化学」。面白そうなこのコンセプト、もう少し詳しく教えてください。

花木さん:世の中の物質は原子という小さな粒子から構成されています。原子が複数集まると、それは分子とよばれ、分子の集合体には超分子とよばれるものもあります。
原子は100種類程度しか存在しませんが、その組み合わせは無限大です。
分子の中の原子をたったひとつ違う種類の原子に変えるだけで、想像しないような機能を発現することはよくあります。
これは地域づくりにも似ていて、地域のいろんなところに原子や分子があるわけです。その原子や分子を掛け合わせてあげることで、新たな機能を生み出す。
こういったイメージで地域づくりを行なっていけないかと思っています。
まだ具体的な事業として落とし込めてはいませんが、化学業界で培った知識や経験を「IT」と掛け合わせることで「地域づくり」にも役立てることができると考えています。

葛川代表:このあたりの「地域づくり」、「IT」、「化学」の掛け合わせた事業イメージは、これから落とし込んでいきますが、私としては、まずは花木が持っている化学の知識を地域の子供達への教育、後進育成に活かしていければと思っています。

 

◇これから事業を進めていく中で、i Beeを通して田子町をどんな姿にしたいと考えていますか?

葛川代表:先ほども話したように、田子町には、まだまだたくさん地域資源があると思っています。
例えば、農業。古くから町の基本産業は畑作を中心とした農業です。
いま現在、農業は後継者不足という大きな課題を抱えていると感じています。しかしながら、ごくわずかではありますが、20代・30代で後継者として農業を行っている方々がいらっしゃいます。
私は、その方々こそが、この後継者不足を打破する大きなキッカケをつくることができると思っています。
例えば、これまで一般的に収穫した作物は農協や市場に出荷し、常に変動する相場によって値決めがされ、収入面が不安定だったことも後継者不足を招いた理由だと思っています。
そんな状況を私達のような一度田子町を出た人間が見ると、生産者ひとりひとりは本当に素晴らしい作物を作っている、若い世代が先頭に立ってITを駆使し自分のつくった作物を自らブランディングし値決め・販売ができれば、いま以上に誇りをもって農業を営んでいけるのではないかと思っています。
地域の資源をi Beeが見える化することで、より多くの人に魅力を伝え、田子町の人たちが自分たちが生み出すものに誇りを持ってもらえるような環境を作りたいと思っています。

八助梅

(i Beeさんが取り扱っている作物の一つ、杏子。この辺りでは大きい梅「ハ助」と呼ばれているそうです。梅と同じように漬物にして食べるそうで、現在では東京の老舗レストランなどでも取り扱っていただいているそうです。こういった、まだ認知度の低い地元の作物の情報発信もi Beeさんのやりたいことの一つとのことです。)

 

◇最後に、この記事を読んでいる方にお伝えしたいことがあれば教えてください。

葛川代表:6月に開業したばかりで、今後もっとi Beeの名前を皆様にお届けできればと考えています。
これまで、自営業の方や個人事業の方には少しハードルが高かったホームページ作成やYoutubeなどを使った自社メディアの創設、また販路開拓などでお困りの方がいれば、i Beeまでぜひご用命下さい。

 

ーあとがきー

葛川代表、花木さんが取り組む事業は田子町には今までなかったもの、先陣を切る彼らにはたくさんの困難が待っていると思いますが、それを跳ね除けられるほどの経験と勢いを感じられたのが印象的でした。

また、そういった事業に「化学」を持ち込むという新しいコンセプトは、全国的にも世界的に見ても地域づくりや地方創生の現場では持ち込まれてこなかった取り組みになると感じています。

「化学」と「IT」の融合が今後どのような形で田子町で花開くのか、今後のi Beeさんの活躍が楽しみです。

 

i Bee 

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問合せ先
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五十嵐 孝直

五十嵐 孝直

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