2021.08.23
かつて、アステカ文明の中心地だった大広場「ソカロ」。
現在では、メキシコのどこの町にもある中心地の広場のことをソカロと呼んでいるそうです。
そんな意味を持つソカロが店名に入った、カフェ・デ・ソカロ。
東京の老舗自家焙煎珈琲店カフェ・バッハで、12年間パティシエールとしてお菓子の製造からコーヒーの生産販売を担当されていた、佐野友美さんが田子町にUターンされ、オープン以来そのこだわり抜いたコーヒーとお菓子で多くの方に愛されている田子町内のお店です。
今、オーナーである佐野さんが、新しいお菓子と自家焙煎コーヒー工房を南部町にオープンするためクラウドファンディングに挑戦されています。
東京からUターン後、これまでの経験を1杯のコーヒーに想いを込めて事業を展開されている佐野さん。
今回なぜクラウドファンディングに挑戦することになったのか、これまでの経緯や今後のビジョンをお伺いしてきました。
カフェ・デ・ソカロは、2017年10月にスタートした自家焙煎コーヒー店です。イベント出店から事業をスタートさせ、2019年に田子町に店舗をオープンしました。
主な事業は、
1、自家焙煎コーヒー、お菓子、コーヒー器具の店頭販売
2、オンラインショップでの販売( https://cafedezocalo.stores.jp/ )
3、イベント出店やコーヒー教室の開催
4、製菓コンサルティング
の4つを行なっています。前職時代の経験を活かした本格的なコーヒーとお菓子の生産販売を、地元でも展開したいと考え起業したのが始まりです。
メキシコやスペインでは、町の中心地の広場のことをソカロと呼んでいます。
セントラルパークのような感じですね。
そこでは、友人や家族と集まっておしゃべりをしながらご飯を食べたり、昼寝や読書してる人がいたり、それぞれが思い思いに広場での時間を楽しんでいます。
スッと入って来て帰っていく、そしてまた翌日そこに集まる、自分がお店をやるときにそんな環境を作りたいなと思ってこの名前をつけました。
選び抜いたコーヒー豆や良い食材を使ってお菓子を作っていることもあって、それまでこのエリアで売られていたコーヒーやお菓子と比べるとどうしても値段が高くなってしまうんです。
当初はこの価格帯で売れるのか、受け入れてもらえるのかがわかりませんでした。
とにかく試飲してもらってお客さんの反応が見たいという気持ちでした。
ただ、その心配も事業をスタートさせてからは少しずつ消えていって、地方においても生活の中にコーヒーがある方はたくさんいらっしゃる。
そういう方達は事業スタート当初から今でもお客様でいてくださっています。
そして、何よりこのエリアの方達は自分で作った新鮮な農産物や加工品を食べてらっしゃるので、美味しいものに対しては都会の方達より敏感。
そういった環境下であったのも事業をやりやすくしてくれたと思っています。
(起業したばかりの時、とあるイベントにて)
お店は実家の小屋を改装してオープンしたのですが、当初はイベント出店がメインだったこともあって、自分が住んでいる近所の知り合いに自分がどんなことをしているのかなかなか伝える機会がなかったんです。
近所の方達は私が生まれた時からのお知り合い。
実家にお店を出したことでそういった知り合いにも自分がしていることを伝えることができて、お店に来てくれることも多くなったのは良かったと思っています。
それから、店舗のことで言えば、昨年コロナウイルスのこともあってネットショップをオープンしたんです。
出歩けない方のためにネットで商品をお届けできる環境を作ったのですが、意外にもネットショップの方はそれほど利用いただける機会は多くなくて笑。みなさん店舗まで足を運んでいただく方が多いです。
コーヒーって、その時の状況で飲みたい味が変わると思うんです。
ネットショップでは、どの豆を買えば今の自分に合うのかがわからない、やはり、みなさんその辺りを聞きたくて店舗に来ていただいているんだなというのは一つ勉強になりました。
カフェ・バッハは、東京・南千住に店舗を構えるコーヒー界のパイオニアとも呼ばれる老舗自家焙煎珈琲店です。
その会社で最終的には製菓部長として、お菓子の製造、企画、仕入れを担当していました。
仕事でパリやリヨン、北京、グアテマラ、パナマ、エルサルバトルなどに出張することもあり、非常に良い経験をさせていただいたと思っています。
会社の方からは残って欲しいと引き留めもあって、2017年に田子町にUターン後も実は講師としてカフェ・バッハの事業に関わってはいたんです。
ただ、美味しいものを作るたびに心に穴が空いているような気がしていました。
お店にいらっしゃる目の前のお客さまたちは、目を輝かせながら「美味しい!」と笑顔になってくれているのに、自分自身はカフェ・バッハとしての質を追い求めながら、たくさんの量を製造し時間にも追われ、毎日が忙しい中で心が豊かになっていないような感覚になっていました。
これは一度立ち止まる必要があるなと思って、地元の田子町に戻ってきました。
いや、それが私って休めない人間みたいで笑。帰ってきて早々にカフェ・デ・ソカロをスタートさせたんです。
帰ってきて気づいたのは、私の地元にはたくさんの良い素材がある。
野菜や果物、前職時代に培ったパティシエールとしての経験を活かすには、こんなに良い環境はないと思ったんです。
それこそ、パート募集とかその時も選択肢って実はたくさんあったと思うんですけど、自分でお店をやるっていう以外に選択肢はなかったように思ってます。
自分が持っている技術で、地方でもっと美味しいものが作れる、食べてもらいたい。そんな気持ちを持ち、事業としてやりたかったんだと思います。
(店内には、常時10種類前後のコーヒー豆が並んでいます)
もちろんそういう体にいい物、美味しい食材を使うという部分は大事なところだと思ってるんですが、私は「食は楽しくないといけない」っていうのが前提にありますね。
食は楽しまないといけないんですよ。
なので私はファストフードも食べますし、カップラーメンとかコーラも好きですよ笑
美味しいと感じるものを楽しむ。
人生の癒しですよ、食を楽しむことは。
(佐野さんが入れてくれたコーヒー。実はコーヒーが苦手な自分用に飲みやすい風味に仕上げてくれました)
事業を初めて4年、おかげさまでお客様も増えてきて、それに伴い生産量も増えてきました。
田子町に店舗を構えてからは2年が経ちましたが、ご覧いただいているように今の店舗はスペースが限られていて商品発送の準備をする際もかなり手狭になってきています。
また、お菓子を作るのも町内の加工場をお借りして作っている状態で、必要な機材も、たとえばオーブンなんかも作るたびに加工場に持ち運びしている状況です。
なんとかもう少し広いスペースで加工場の許可も得た場所で常時お菓子やコーヒーの焙煎ができるようにしたいなと思ったのが理由です。
新しい店舗自体は最近取得でき、これから中の改装を始めるところです。
(取得した新店舗。住所は南部町だが八戸にもほど近く、国道からもすぐ)
(改装予定の内部。加工場にカフェエリアの併設もできるほど広い店舗)
クラウドファンディングに挑戦しているのは、もちろんそういった改装費用の資金として活用したいところもあるのですが、もう少し自分の事業を周りに知ってもらいたいなと思ったのがあります。
地元の新聞やテレビなどでも取り上げていただいて、少しずつ自分の周囲には認知はされてきていると思うのですが、よりもっと日本全国の方に自分自身の事業を表現したい、お伝えしたいと思ってクラウドファンディングに挑戦しています。
実際やってみると、数年ぶりに連絡をとった友人とかが快く応援してくれたり、新たな繋がりが増えたり、いろんな方に支えられて進められているなというのは感じています。
今よりもスペース的に広くなる新店舗では、お菓子の生産量や焙煎するコーヒー豆の種類を増やすことができるので、商品ラインナップも増えてくると思います。
それ以外にも、こんなことをやりたいなと思っています。
・カフェスペースの開設でお客様が滞留できるソカロのような環境作り
・カフェスペースの運営を委託
・生産者と消費者を繋ぐ仕組み作り
まずはお店の名前通り、カフェスペースを作ることで、メキシコのソカロ(広場)のような人が滞留できる環境づくりをしたいと思っています。
カフェスペースでのんびりしてもらいながら、時にはコーヒー教室にも参加してみたり庭もあるのでグランピングをしてみたり、そんな環境を作りたいです。
2つ目は、そのスペースの運営を第三者に委託したいなと思っています。
自分が事業を拡大することで、雇用というか、誰かが仕事ができる環境づくりができたらなと思っています。
前職時代、部長という肩書きもあって部下とは上下の関係になることが多かったのですが、私としてはこの関係性に違和感があって、もっと彼らの能力が発揮できる関係性で仕事ができないかと思っていたんです。
あるとき、いつもなら上から下で仕事を頼むところを、「私が責任取るから自分の好きなようにやってみて。」って仕事を頼んでみたんです。
そしたら、いつもより伸び伸び仕事をしてくれて、結果、素晴らしい仕事をしてくれた。
自分の労力も軽減されて、やっぱり人は、上下よりも水平の関係性の方が能力を発揮できるんじゃないかと思ったんです。
なので、この店舗でも人を雇うという関係性ではなくて、ビジネスパートナーのような関係性で、共同で運営していければと考えています。
3つ目の生産者と消費者をつなぐというところですが、生産者はやっぱりどこかではじきの作物が出てしまう。
これが本当に勿体無いと思っていて、このカフェのスペースも活かして、そのような、はじきのものも直接消費者の方に渡るような仕組みを作りたいと思っています。
私は小さい頃からお菓子作りが好きでした。
そんな好きな仕事も心に穴が空くほど離れたいと思うこともありました。
でも、得意だったから、好きだったから、今でもこの仕事を続けてこられたと思います。
そう思えたのも、田子町にUターンしてきて、地域の美味しい食材を改めて感じられたから、自然豊かな環境を感じたからだと思っています。
今、同じように悩んでいる人も地方に来れば解決することもあると思いますよ。
私は、そういう周りにいる人達が私のコーヒーやお菓子を通してその人らしく笑顔になってくれれば・豊かになってくれれば、そういう人が一人でも増えてくれれば私自身もより豊かになれると思っています。
今そういう人が少しずつ増えてきているので、一度空いてしまった自分の心は少しずつ満たされてきてますね。
(オーナーの佐野さん。現在の店舗にて)
ーあとがきー
2017年の創業から非常に早いペースで事業を拡大されているなと感じる筆者に、佐野さんは、「これでも遅いぐらい、自分のペースでやっています。」という言葉が印象的でした。
東京での前職時代にされた苦労も、地方に来ることで少しずつそれが癒やされていき、改めて地方には人の心を満たす魅力があるのだと感じました。
佐野さんからは、この記事を読んでくれた方でお店で佐野さんにお伝えしてもらえれば試飲サービスしてくれるとのことでした。
ぜひコーヒーやお菓子を買いに、
それ以上に佐野さんに会いにお店に行ってみてください。
心が満たされる想いの詰まったコーヒーが待ってますよ。
Written by 五十嵐 孝直(サンノワ田子町PR大使)
自家焙煎コーヒー店 カフェ・デ・ソカロ
住所:〒039-0200 青森県田子町舞手41
電話番号:090−2955−0901
定休日:火曜日、水曜日、木曜日(他不定休日あり)
営業時間:10時ー16時
(クラウドファンディングページ)https://camp-fire.jp/projects/view/471217
(オンラインショップ)https://cafedezocalo.stores.jp/
(Facebook)https://m.facebook.com/cafedezocalo/
(Instagram) https://instagram.com/cafe_de_zocalo
五十嵐 孝直
田子町の魅力をお届けします!