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「地域おこし」から「人おこし」へ@五十嵐孝直さん(田子町)

2021.04.12

 

サンノワがリリースされてから、初めての編集長インタビュー記事です。

記念すべき第一回は、田子町地域おこし協力隊の五十嵐孝直さんです。

編集長と同じ苗字で、同じくIターン(都市部から出身地と違う地方へ移住すること)で青森へ移住。

活動内容も近しいことから、インタビュー第一号は彼に!と決めていました。

五十嵐孝直さんの田子愛や活動内容が皆さまに伝われば嬉しいです。

 

◇ 自己紹介と田子町に来たきっかけを教えてください。

 

五十嵐孝直

 

 千葉県習志野市出身で1985年生まれの36歳です。

大学卒業後に外資系商社へ入社しました。勤務地は横浜でした。

その後、縁があってシンガポール支社を立ち上げることになり、現地代表に就任しました。

そこで6年間、船会社向けの海図販売をしていました。

その後、日本へ戻り、財務チームや高級外車の販促部門マーケティングマネージャーを務めていました。

沢山の経験をさせてもらっていたのですが、このまま大きな企業の枠の中にいるのが自身に合っていないと感じるように。

同時に何かやれないかなと考えるようになりました。

 

そして、色々な可能性を模索していた時に、候補に挙がったのが『バクテー』でした。

日本であまり流行っていない、認知度の低いバクテーを日本に流行らせたいなという想いから、主原料となるにんにくの生産地でバクテーを作り販売するアイデアに至りました。

そのにんにくの生産地として着目したのが、田子町です。そして、地域おこし協力隊募集に応募し、採用されて田子町にやって来ました。移住して3年目になります。

 

◇ バクテーって何ですか?

 

 バクテーとは、胡椒がピリッと効いたスープに、スペアリブなどの肉類とにんにくが入った東南アジア発祥のスープ料理です。

バクテーには、にんにくが必須で、とても重要な材料になります。

シンガポールでは、普段の食事や飲んだ後のシメなど、いつでも食べる、日本でいうラーメンのようなソウルフードとして人気を博しています。

現地では、ごはんや揚げパン、そうめんに近いミースアという小麦の麺などで食べています。

私のおすすめは、そのままスープか揚げパンです。

 

バクテー

 

 バクテーを知ったのは、シンガポール駐在時です。現地の方に連れて行ってもらったお店で知りました。

現地の方が連れて行ってくれるお店ということで、とても期待していたのですが、着いたお店を見てがっかりしました。

正直、汚らしいお店だな。こんなお店で食べたくないなと思いつつ、出された料理がバクテーでした。

そのバクテーが、驚くほど美味しく衝撃を受けました。それ以来バクテーが大好物になりました。

 

バクテー

◇ それでバクテーを田子町で作りたいと考えたのですね?

 

 当初は、作るという発想ではありませんでした。私は料理人ではありませんし、素人が作るってどうだろうって考えもありました。

よって、当初の案は、初めてバクテーを食べたお店の日本進出に介在し、田子町産のにんにくを使ってもらうことでした。

商社的な動きは、私の過去の経験も活かせますし、バクテーが日本で流行れば、主材料となるにんにくの産地田子町の知名度もアップすると思ったからです。

初めてバクテーを食べたお店は、フランチャイズ展開、海外展開をしていたので、日本進出のアプローチをしていました。

先方も、翌年位にはという前向きな感じで話しが進んでいたのですが、新型コロナウイルス感染症で破談となってしまいました。

その流れの中で、自分で作るという選択となりました。素人ではありますが、趣味でバクテーを作っていたので、完全なゼロスタートでなかったという理由もあります。

町の加工場である、産直たっこやで製造し販売することが決まっています。現在実施中のクラウドファンディングが、そのスタートになります。

 

クラウドファンディング Makuake

シンガポールの味をご自宅で。青森県田子町産ニンニク香る究極のバクテースープキット

バクテースパイス

◇ バクテーの材料となるにんにくの産地は田子町以外にも。他地域の選択肢はありましたか?

 

 ないですね。田子町一択でした。にんにくの産地を探したので、当然他地域も目に入りました。実家のある千葉県周辺にもにんにくの産地があることも知りました。

ただ、実家の近場では新しい挑戦に保険を掛けているような気がして嫌だったこともあり、それなら思い切って一度も行ったこともない青森とかにしようと思い、そこから田子町だけを選びました。

 

◇ 田子町に来て丸2年。どんな活動をやっていますか?

 

― 空き店舗の活用 ―

 

 最近購入した、この空き店舗の活用です。使い道やリノベーション、資金調達の可能性を探っています。

この場所で実証事業する形で、空き店舗活用の可能性のプロセス構築、モデルづくりをやります。

自分だけが、ここの空き店舗をリノベーションして活用しても、町自体が強くなる訳ではありません。

ここを通じて、人集め、人おこしをやりたいです。

地元の人が「自分もやってみたい」と言う人を起こすところまでやってみたいです。

 

マルナカ呉服店

 

ここをリノベーションするところを他の空き店舗にも見せたいです。

例えば、ここの動きを評価してくれた役場が助成金を作ってくれたりすると、こんなことができますよと伝えられます。

このままでは、他の空き店舗は、空き店舗のままです。声を挙げること、動く事の大切さを知ってもらいたいです。

ここの今後の活用方法を多くの人に見てもらって、「こんな使い方をしたい」と、空き店舗をどう活用するのか考える人たちの機運が高まる流れを創りたいです。

 

◇ この空き店舗活用の理想や描くゴールはありますか?

 

 私が理想としているのは、岡山県矢掛町での取組みで「アルベルゴ・ディフーゾ」です。

これは、イタリア語で分散したホテルと言う意味で、町全体がホテルであり、寝室やレストランやお土産屋が、町の様々な場所にある。そんな概念です。

この岡山県矢掛町の取組みが、田子町には合うんじゃないかと考えています。

例えば、ここが仮にゲストハウスとした場合に、ご飯は、勇寿司さんに行ってもらったり、お土産は、ガーリックセンターに行ってもらったり、この町が一つのホテルの様に捉えてもらうことをイメージしています。

その取り組みの一環をここが担うことも考えていますし、旅行業の資格も必要なので、現在資格取得の勉強も始めています。

 

五十嵐孝直

― 観光の可能性があるから、町の魅力を掘っている ―

 

 私が去年、謎説きのイベントをやったり、産直マーケットでレジ打ちをしているときに、近隣の方々でも「田子町に来ると遠出してきた感じがする」と話されることが多いんです。

その感覚は非常に大事と捉えていまして、いわゆる旅行した気分になる町であるのではないかと。

ただ、現在は、旅行者を受け入れるようなサービスが少ないため、田子町に来て、大抵がガーリックセンターに行って終わってしまいます。

そこにもう少しアクセントを加えられると、よりこの田子町が観光として活きられる道が出てくるのではないのかなと思います。

そのアクセントに大事なのが、みやむーさん(みやむ~のにんにく。代表の宮村祐貴さん)や、川名さん(Takko cafeオーナーの川名美夏さん)の様な、人を集めようとしている人たちが、もっと楽に集められるようにしたり、もっと商売に繋がる様な仕組みにすることです。

お二人の様に頑張っている人を見ているからこそ、「アルベルゴ・ディフーゾ」と言う考えを持つようになりました。

 

◇ そう言えば、写真展とかもやっていましたね?

 

― 町を循環させるコンテンツを作りたかった ―

 

 昨年のコロナ過の中でも、ガーリックセンターがとても繁盛していました。多くの人たちが、ガーリックセンターだけに集まって帰ります。

その光景を見た時にもったいなと思ったんです。どうにか町を循環させたいけれど、誰も周辺の道を歩かないんです。

そんな時に、ファーマーズマーケットの活用方法を考えるタイミングと重なっていたので、くだらないけど写真展でもやってみようかとなりました。

人をガーリックセンターから別の場所へ引き寄せられないかなという想いからやってみました。

今振り返ると、写真展も「アルベルゴ・ディフーゾ」の考えが根底にあったんだと思います。

写真展の経験は、田子町が、もっと食以外の分野でも伸びていかなければならないという活動の源泉になっています。

 

五十嵐孝直

◇ 観光をやりたいと思うようになったきっかけとかありますか?

 

― 危機感をチャンスに ―

 

 以前、訪れた浅虫温泉を訪れた時に、元々沢山あった旅館やホテルが、世の中の需要変化に対応し、レストランや老人ホームに変わっていることを知りました。

世の中の変化に対応して、町の形が変わっていったんだと思うんですね。

しかし、田子町は変わっていないように感じています。人が減り続けているばかり。高校も無くなる。

このままでは、生活する場所として、最低限の物しか残らなくなってしまう可能性が高いです。

そうなると、田子町は遠い。田舎に来た感がある。そんな部分を伸ばしていかないと町として持続できなくなるのではと危機感をもっています。

そんな考えから、観光の面を伸ばしていきたいなと考えています。

来月には、町の観光協会と一緒に謎解きのイベントをやるのですが、田子町に来る方が食べるだけではなく、町の中を歩いてもらう要素を新たに加えていきたいと考えています。

 

田子町謎解き街歩きイベント

田子町謎解き街歩きイベント 参加申込フォーム

◇ これからやりたいことを教えてください

 

― 地域の声を聞いて、人おこしをする ―

 

 今一番やらなければならないと思っているのは、田子町の人おこしです。ここの空き店舗を掃除したりしていると、「何やるの?」って、多くの方が中に入って来てくれます。

そんな中で、「○○してみたいんだよね」とか、「○○やって欲しいだ」って、意見をもらうことも増えてきました。

構想は持っているんだけど、具体的に動けていない人がいるんだなと知りました。そんな部分を私が関わることで実現化に繋げることができるんじゃないかと思いました。

まず私が受け皿になって、話しを聞いて、活動して行きたいなと考えています。

私一人でできることは限られます。人おこしをすることで、その方々と手を組んでやれることを伸ばしていきたいなと思っています。

ここの場所は、手を加えなければならない場所は沢山ありますが、そんな場所でも地域の方々と一緒にやれること、やりたいことを増やしていけます。

私は、地域の中に入り、地域の方々の声を聞いて、地域の方々と一緒に動きたい。最近改めて感じていることです。

 

― あとがき ―

 

五十嵐孝直さんの「人おこし」という考えは、

編集長の活動内容にもリンクしていて、とても共感しました。

インタビュー後に、サンノワのライターという立場でも

田子町の「人おこし」をやってみませんか?と打診し、

快諾してもらいました。

田子町担当の五十嵐孝直さんの記事も楽しみにしてください。

 

五十嵐孝直さんのアカウント

Facebook : https://www.facebook.com/takanao.igarashi

田子町地域おこし協力隊のアカウント

Facebook : https://www.facebook.com/TakkoTownCRCS/

Instagram : https://www.instagram.com/takkotowncrcs/

 

サンノワ編集長 五十嵐 淳

サンノワ編集長 五十嵐 淳

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