2021.05.02
サンノワがリリースして約1か月が経ちました。
今回は、編集長2回目のインタビュー記事です。
お相手は、三戸駅前にある清水屋旅館で、5代目となるべく修行中の極檀優也さんです。
ご本人には、インタビュー予定は、1時間程度とお伝えしていながら、結果は2時間超!
編集長が深く共感した、極檀優也さんのお話が伝わると嬉しいです。
南部町の清水屋旅館の3人兄弟の長男として、1994年3月に生まれました。現在27歳です。
近所の保育所、小中学校を卒業し、八戸高専(5年制の学校)へ入学しました。
4年生までは、寮生活でしたが、卒業後は東京へ行く予定でしたので、最後の1年間は自宅である清水屋旅館から学校へ通いました。
家族との時間を持ちたいというのが理由です。
八戸高専卒業後は、東京農工大学の3年生へ編入し、卒業後は大学院へ。
4年間で化学の勉強へ打ち込み、修士号を取得しました。
卒業後は、化学メーカーへ就職しました。
配属地となる宮城県内の工場へ勤務し、その後2年で退職して、昨年4月にUターンしました。
都心部と言っても、中心地で過ごしていたわけではありません。
社会人として過ごした宮城県は、仙台の市街地ではなく隣の多賀城市寄りの中野栄という郊外の街に住んでいました。
郊外に住んでいたからということではありませんが、休みの日なんかは、よくドライブに行っていました。
近隣のダムを見に行ったり、宮城県内の他、山形や福島の有名な温泉巡りなんかしました。
その中で、今の活動にも繋がっているキャンプなんかもはじめました。
正直、前向きな理由で帰ると考えてた訳ではありません。
きっかけは、宮城での仕事が合わなかったことが大きいです。
仕事内容が、新しいことへの取組みではなく、過去に作られたプラントなどの維持がメインでした。
長年の経験を活かすことが得意な優秀な先輩方も多いので、付いていくのも大変でした。
そんな中で、次のことを考えている内に、地域おこし系の仕事に興味を持ちました。
石巻の町おこし、長野のゲストハウス、北海道のWWOOF(農業を手伝いながら滞在する取組)等を現地で学んできました。
色々な地域を見て、沢山の方が好きなことを仕事にしていることに気が付きました。
そして、義務感ではなく、田舎で好きなことを仕事にしたいと考えるようになりました。
そのタイミングでも決めていませんでした。働ける場を探しているときに、地元の南部町も選択肢として考えましたが、地元には好きなことを仕事に出来そうな場もなさそうだし、実家の清水屋に戻ってもプランも思い浮かばなくて、田舎で仕事をするんだったら、どこかの地域おこし協力隊とかでキャリアを積むのが良いのかなと考えていました。
そんなことを考えている時期に、サンノヘエキマエヒロバという実家近くのイベントを知りました。
調べてみて内容に興味を持ち、一度参加してみたいなと思い、主催者へコンタクトを取ってみることにしました。
実家近くで燻製商品を作ったり、カフェをやっている、南部どきの根市さんです。
最初は、イベントの裏方的な関わり方を考えていたのですが、
根市さんよりイベント後の地域への想いを伝えるプレゼン大会に出て欲しいと言われてから、気持ちも変化してきました。
プレゼン大会で地元への想いを話しているうちに、自分は地元が好きなんだと再確認する機会となりました。
そして、瞬間的に気持ちが盛り上がり、実家を継ぐことを発表しました。
瞬間的な発表とはいえ、実家の旅館に関しては、元々何とかできないかなとは考えていました。
大学入学前に両親が話していた、「清水屋は私たちの代で終わり」って、言葉が心に残りずっとモヤモヤはしていました。
ですので、清水屋に関しては、自分ではない他の方に継いでもらう、事業継承で関わるイメージは考えていたのです。
それが、自分で継ぎたいと言う気持ちに変わったわけです。
サンノヘエキマエヒロバで、これだけ地域で楽しいことをやろうとしている人たちがいて、
清水屋旅館の息子である自分が、何もやらないというわけにはいかないと思いました。
また、数年後には、この地域は面白い事になるという希望を持てたことが大きいです。
帰ってきて間もない頃は、旅館を盛り上げるアイデアを練る時間に充てていました。
最初に考えたことは、地域資源とかの活用ではなく、料理で特色を付けることでした。
料理のプランとかで、集客したいと思い、料理長である父親に料理を教えてもらいながら、自身が料理人としてスキルを磨くべく、近隣店舗で料理修行しました。
料理人として腕を磨くために複数店舗での修行を考えていました。
そう思っていながら、近隣店舗の修行は8月末で辞めてしまいました。
理由は二つ。一つ目は、当旅館に来る方々の想定ニーズです。
料理なのかと疑問を持ち、客層が違うのでないかと気が付いたことです。
料理が美味しいことは、付加価値にはなるだろうと思います。
ただし、それが最大効果にはならないのではと。
二つ目は、自身の素養です。料理が合わない性格なんだと思いました。
当旅館の料理長である、父は細かいところまで目が行きつく性格ですが、自分はおおざっぱな性格で、そもそも合わないなと。
何か一つを極められたらと考えていましたが、料理は極められないなと痛感しました。
その後、1か月程経ったあたりから、青森県の宿泊キャンペーンがはじまりました。
このキャンペーンの適用条件として、地域おこしに繋がるような特色あるプランを提示する必要があるのですが、このタイミングで、プランニング(企画)で価値を上げることに可能性を感じました。
清水屋にしかできないプランを考えながら、地元のお酒や南部せんべいのお店と関わることで、
清水屋と町の関わりを考えるきっかけになりました。
創業130年を超えた旅館ですし、町おこししたら自然に清水屋も盛り上がるなと思いました。
料理の修行から約1か月間は、ただ旅館の手伝いをするだけという感じでしたので、宿泊キャンペーンによって、自身の地域おこしと旅館の価値向上を繋げる「プランニング」という考えに魅力を感じるようになりました。
もし、キャンペーンがなく、ただ手伝っているだけだったら、その考えには至らなかったかもしれません。
そのタイミングで、写真を撮る機会も増えました。
地元の人も忘れている素晴らしい景色を発掘したい。町の魅力は、清水屋の魅力。という観点から、南部町の他、隣の三戸町や田子町の景色を撮り、インスタグラムへの投稿やフォトブックを作ったりしました。
フォトブックは、お客様が直接手に取って見てもらう機会となり、周辺観光の促進にも繋がりました。
南部せんべいを活用したキャンペーンプランの準備では、南部町と三戸町の主要なせんべい屋を全て周りました。
はじめは無愛想だった店のお母さんが、何度か足を運ぶようになると会話が弾むようになり、お互いに笑顔になれる関係性が心地よいなと感じました。
せっかく良い関係性を築くことができたので、永く続くような、次の一手を考えたいですね。
とは言え、何か目新しいことをしたい訳ではありません。
例えば、デザインだけ目新しい南部せんべいが売られていますが、個人的には違和感を持ってしまいます。
その目新しいデザインのせんべいが売れたとしても、その周辺の今まで通りのせんべい屋は衰退していく。
田舎で仕事するときは、元々ある事業を邪魔する事業はやるべきでないという想いが強いので、地域おこしと言う名目で、地域文化を壊すような手法は好きではありません。
おじいちゃんが焼いて、おばあちゃんが袋につめていく。その風景まるごとが南部せんべいだと思っています。
このありのままの風景をPRできる取組みなどが好きですね。
三戸駅前で約15年位前から続いている朝市ですね。
夜明け前から、駅前に店舗代わりとなる軽トラックが集まり、
野菜、くだもの、コーヒー、編み物、服、花、串餅、やきとり等が売られます。
自分も出店者として、惣菜、卵焼き、照り焼きチキン、ホットサンド等を売っています。
周辺の地元客が井戸端会議的に集まる、地元交流の場として、
この周辺では、一番面白いと思う取組みですね。
沢山あります。まずは、清水屋の裏庭整備です。
自前のテントや友人から借りたテントや備品で人が集まれる場づくりをしています。
先々は、裏庭を芝生にして、地域の人たちが集まれる公園のようにしたいなと考えています。
旅館のためだけではなく、「地域のために何かをやる旅館」としての在り方、モデルとしてこの活動を地域の方々に見てもらいたいです。
整備しながら、イベント、テントサイト、近所の居酒屋メニューが集まるビアガーデン等をやりたいですね。
また、簡単なつまみとお酒を用意したポップアップバーや、
テイクアウトメニューを販売する、キッチンカーなんかをやります。
不定期ですが、土曜に鍋のテイクアウト販売していますが、毎回50~60杯は完売します。
近隣の方々が隔週レベルでも買ってくれるんですね。
それだけでも十分嬉しいのですが、できればもう少し広域の方々にも来て欲しい。
でも、そんな簡単に来るのは難しいだろうなと。
それなら、こちらから行こうと考えて、キッチントレーラーを購入しました。
こんな感じで、やりたいこと(手段)は、沢山あるんですが、目的は固まっています。
それは、きっかけづくり、手軽な感じで巻き込める仕組みづくり、地域の交流の場づくりです。
キッチンカーで繋げ、共通の想いを持つ仲間が集まる場にしたり、田舎の地区ごとの交流が町や圏域の交流へ繋げられたら嬉しいです。
これが、地域の魅力づくりであり、清水屋としての魅力づくりとなると思っています。
「地域の集まりへの参加は楽しいし、喜ばれる」と、自分が楽しみ、地域の方々と楽しむことで、地域の内側からの魅力発信への想いを大切にしている極檀優也さん。
南部町の魅力発信は、彼にお願いするしかないと、サンノワのライターをお願いし、快諾いただきました。
南部町担当の極檀優也さんの記事を楽しみにしてください。
サンノワ編集長 五十嵐 淳
三戸郡の「輪」と「和」と「話」を発信します!
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